モンゴル本のメモ。
元寇以外の、モンゴルの歴史のイメージってなんですか?
遊牧の価値って何だと思いますか?
『モンゴル帝国と長いその後』
2016、杉山正明氏。
モンゴルの歴史の本というよりは、西洋中心の歴史観に物申す!という本のように思った。
遊牧に新たな価値を見出している。
- 遊牧。年間の移動システム。夏営地(散会放牧)をヤイラク、冬営地(集団越冬)をキシュラク、とよぶ。移動経路は決まっている。10数キロから数百キロまで。
*夏と冬で集団が変わるのも面白い。家族観が一年の中で変わるのかな?あなたの家族は誰ですかって聞いたらなんて答えるんだろう?
遊牧はさすらいや根無し草ではなくって、システマティックでダイナミック。
そのままでは定住して暮らせない乾燥した広い大地を、生活の場所として活用できるようにしたのが遊牧。
定住、農耕だけでしか生きていくかたちがなかったならば、人類の活動の舞台はいちぢるしく限られた。
そういう見方もあるのだな。
新たな価値を見出す観点だわ、私にとって。
- ざざざっとした流れ(端折り読みにつき…)
840年 ウイグル帝国が瓦解、キルギスと共に!モンゴル系の人々がモンゴル高原へ進出。
(キルギス料理とモンゴル料理似てるものある気がする。ゲルや、遊牧の雰囲気も)
カラコルム:首都。1235年~
1260年、クビライが大カーンに即位。
(*クビライ、なんだね、フビライ、じゃなく)
1274年クビライ、第一回日本遠征(文永の役)
1578年 アルタンがソナムにダライ・ラマの称号を与えた。
(*ダライ・ラマの称号って人間があたえるもの・・?アルタンは偉い僧か何かなのかな??ソナムって名前インド人でもいた。女の子)
1911年 辛亥革命。→1912大清帝国(ダイチン・グルン@満州語)崩壊
日露戦争。の、あと、四川省での鉄道の国有化&外国への借款に対する反対暴動→武昌で軍が反乱。(鉄道借款は国権を売り渡す行為と批判)
→各地で反乱が起こり、清からの独立宣言。→外モンゴルも独立を宣言
「民族」、民権」「民生」三民主義。孫文が 臨時大総統に。袁世凱は、清の皇帝を退位させ、そして袁世凱が最高権力者の大総統に。
第5代、クビライ・カアン以降、大元ウルスが宗主国。
ウルス:ユーラシア中央に展開した、遊牧民を中心とする国家。土地というより人間の塊に特化した概念。ウルスの長をカン、さらにその上をカアンとよぶ。二重構造。
- 筆者的に、中東戦争の原因の大部分をつくった3点セット:☆フサイン・マクマホン協定(1915-16)、☆サイクス・ピコ秘密条約(1916)、☆バルホフォア宣言(1917)
★オスマン帝国の攻防は、イスラーム中東地域のいばらの道を象徴する→今に直結する現代史の起点。
- 西欧の拡大とそれによる世界の統合というゴールは1910年代に西欧で体系化された枠組みに依拠しちゃってるだけ。そのころヨーロッパは自信に溢れていた。
中華文化人やムスリム知識人はモンゴル帝国の悪口いうけど、他者を野蛮、加害者としたいだけ、というのが著者の見解。ほんとうは、中華文化はモンゴル時代に最も輝いた、と主張。
- アジアとヨーロッパの語源
アジア:古代アッシリア語でASUアス。日出ずるところ。EREB、エレブ、日没するところ。ギリシアに伝わって、牛に変身したゼウスが女神エウローペーを略奪してその背中に乗せて海を西へ渡ったという神話がかぶさり、エウローペートエレブは語の要素が共通、ヨーローッパ、に。
現在のメインストリーム思考だけが価値があるのじゃないのだ、という意味で勇気づけられる本でした。